かつての南町田周辺は南多摩郡南村という、山林と田畑が広がる緑いっぱいの農村でした。1958年、周辺町村との合併により町田市が誕生。やがて東名高速道路や東急田園都市線が開通し、急速に近代化を遂げます。1976年の南町田駅開設と前後して、駅周辺エリアで土地区画整理事業が実施され、住宅地として若いファミリー層が次々と転入。2000年以降は、大型商業施設「グランベリーモール」の開業などにより商業地としてもにぎわうようになりました。 2017年には、町田駅方面や空港行きの路線バスが発着する北口広場が整備され、国道16号町田立体ランプも開通。便利に多方面へアクセスできるようになりました。
まちの名称であり、駅名にもなった「南町田グランベリーパーク」は、鶴間公園の自然や憩いや活動が身近にある暮らしを表す「パーク」と、17年間地域に根差し、2017年に閉館した「グランベリーモール」の「グランベリー」を組み合わせたもの。自然とにぎわいが融合する“新しい暮らしの拠点”となることを願い名づけました。 ロゴマークは大空に向かって伸びやかに育つ大樹をモチーフにしており、駅と商業施設、公園がシームレスにつながる様子を表現しています。マークを彩る4色には新しいまちで過ごせる時間や空間をイメージしたカラーを採用。7つのダイヤは商業施設内の7つの広場を象徴しています。
まちの景観デザインは、駅直結の商業施設における都市のライフスタイルと、公園から境川へと続く豊かな自然を融合させ、“南町田ならではのパークライフ”を意識。人々にとっての憩いの時間や、家族・友達との楽しいアクティビティ、イベントを通して交流が生まれることを期待して、パーク全体に14の広場空間を散りばめました。 「フィールドペイビング」と名づけたまちの舗装は、色と陰影の重ね合わせでできており、雲や樹々の影が重なり合うかのごとく、その時々の環境やそこにいる人々の動きに呼応して移ろいます。また、パーク全体を連続してつなぎながらも、ところどころで色合いを変えて各エリアを特徴づけています。
商業施設は「ヴィレッジ型空間」をコンセプトに、空やみどりと調和する低層の表情豊かな建物群と、広場、デッキ、階段を組み合わせ、歩きめぐるたびに新しい発見や出会いが生まれるデザインを目指しました。鶴間公園と商業施設で統一感のあるまち並みにすると同時に、駅自体も公園との一体感を味わうことができるデザインにしています。 また、鶴間公園のみどりをまちの中に取り込むように、公園から駅までの動線上には鶴間公園や境川を意識した在来種中心の植物を配置。公園から離れた東側エリアは、建物をみどりで彩るような色や形に特徴のある植物を採用しています。
2度目となる今回の土地区画整理事業では、公園、道路、宅地を再配置し、商業施設と公園をひとつの大きな街区に。その上に駅から商業施設、公園、周辺の住宅市街地まで、歩車分離されたバリアフリーな歩行者ネットワークをめぐらせました。 これらの歩行者の安全と快適性を考慮した歩きやすい環境づくりや、みどりを取り入れた空間のデザインに官民連携で取り組んでいることが持続可能なまちづくりとして高く評価され、2019年に国際的な環境認証システム「LEED®ND(まちづくり部門)」のゴールド予備認証を取得しました。まちづくり部門の認証取得は国内5例目、エリア内に駅舎を含む認証取得は日本初です。
町田市と東急が共同で進めてきた「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」。その過程で、地域のみなさまとまちづくりや鶴間公園の計画・活用に関する意見交換を重ねてきました。 2015年後半には約3カ月間にわたり、まちづくりの事例や考え方について学ぶ、公開研究会「Lab・未来創造 in 南町田」(全5回)を開催。2016年以降も、「“Park Meets The Future”鶴間公園の明日を考えるワークショップ」(全5回)と、その続編にあたる公園の活用アイデアを考えるワークショップ「鶴間公園のがっこう」(全6回)、さらにパーク全体を豊かに利用するきっかけづくりの企画「南町田のまちのがっこう」(全5回)を実施しました。みなさまからいただいたアイデアはパークの企画・デザインの助けになっています。 今後も地域のみなさまのアイデアがまちにあふれ、このまちが「みんなのまち」になることを期待します。